12. MPEを編集する

MIDI Polyphonic Expression(MPE)はMIDIの拡張規格で、パラメーターのコントロール情報をMIDIチャンネル全体に付与するのではなく、ノートごとに付与することができます。 この方法でMIDIを扱うと、MPE対応機器がノートごとに複数のパラメーターをリアルタイムでコントロールして、より表現力豊かな楽器演奏を可能にします。

LiveがMPE対応のMIDIコントローラーからノートごとのエクスプレッションデータを受信できるようにするには、最初に環境設定[Link, Tempo & MIDI]でこのコントローラーの[MPEモード]をオンにします。

MIDIコントローラーのMPEモードをオンにする

トラックの入力デバイスに、MPEが有効のMIDIコントローラーを選択すると、入力チャンネルのルーティングは[All Channels]に固定され、個別のチャンネルには選択できなくなります。

MIDIコントローラーの使用についての詳細は、「MIDIとキーのリモートコントロール」 を参照してください。 コントローラーの設定が完了したら、そのコントローラーでMPEデータを含む 新規MIDIクリップを録音 できます。

クリップビューの[MPE]タブでは、クリップ内のノートごとに、次の5次元のMPEデータを表示/編集できるようになります:[Pitch]ノートごとのピッチベンド、[Slide]ノートごとの縦軸、[Pressure]ポリ・アフタータッチ/MPEプレッシャー、[Velocity]ベロシティ、[Release Velocity]ノートオフ・ベロシティ。 こうして、録音した素材のエクスプレッションを微調整したり、MPE対応インストゥルメントでサウンドの変化をポリフォニックでオートメーションさせられるようになります。

MIDIクリップの作成が、MPE対応機器によるものか 他の方法 によるものかは関係なく、すべてのクリップでノートのMPEデータを表示/編集できます。 次のセクションではMPEデータの表示と編集について説明します。

12.1 MPEデータを表示する

MPEデータを含むMIDIクリップをクリップビューに表示

MIDIクリップのMPEデータを表示するには、まずクリップをダブルクリックしてクリップビューを開き、[MPE]タブをクリックするか、キーコマンド Alt3 (Win) / Option3 (Mac) で使用すると、エクスプレッションエディターがクリップビューの最下部に開きます。 5つのMPEパラメーターのうち、[Slide][Pressure][Velocity][Release Velocity]の4つは別々のエクスプレッションレーンに表示されます。 デフォルトでは[Slide]と[Pressure]のみ表示されます。 5つ目のパラメーターである[Pitch]は、MIDIノートエディター内でノートの上に重なって表示されます。

それぞれのエクスプレッションレーンは、左側の[レーンセレクター]から表示/非表示を切り替えることができます。 [レーンセレクター]の下部にはトグルボタンがあり、有効なレーンをすべて同時に表示/非表示できます。

これらのボタンでエクスプレッションレーンの表示を切り替え

すべてのエクスプレッションレーンセレクターが非表示/無効の場合、トグルボタンを押すとすべてのエクスプレッションレーンが一度に表示されます。 各エクスプレッションレーンの大きさは、その境界線から個別に変更できます。 レーンとMIDIノートエディターの境界線をドラッグすると、すべてのエクスプレッションレーンで同時にサイズを変更できます。

Alt (Win) / Option (Mac) を押しながらエディターレーンのトグルボタンを押すと、すべてのエクスプレッションレーンが表示されます。 [エディターレーンの表示/非表示]トグルボタンを使用するか、エクスプレッションエディタービューの境界線をドラッグしてエクスプレッションレーンを非表示にすると、レーンも非表示に切り替わります。

MIDIトラックのメーターには、MPEのノートごとのコントロールチェンジが表示されます。 ノートごとのコントロールチェンジを受信すると、メーターの一番下の目盛りが青色に点灯します。

12.2 MPEデータを編集する

[MPE]タブを選択している時にMIDIノートエディター内でノート(またはそのエクスプレッションのいずれか)をクリックすると、そのノートは透過オーバーレイで表示されます。 エンベロープは既存のブレークポイントとともに表示され、そのノートの[Pitch][Slide][Pressure]の各エンベロープを編集できるようになります。また、マーカーを使用してノートのベロシティ値とリリースベロシティ値を編集できます。 未選択のノートは灰色表示になり、そのノートのエクスプレッション・エンベロープは暗く表示されます。

ノートを選択するとエクスプレッション・エンベロープが表示されます

編集したいノートやエンベロープをクリックすると、選択したエンベロープですべてのエクスプレッション・ブレークポイントとブレークポイントを結ぶ線が、ドラッグ可能なオブジェクトに変わります。 エンベロープの背景をドラッグすると、範囲を指定して選択できます。 MPEデータの編集方法は次のとおりです。

  • ライン上の任意の位置をクリックすると、そこに新しくブレークポイントが作成されます。
  • ブレークポイントを消去するには、ブレークポイントをクリックします。
  • ブレークポイントの編集をより簡単にするため、ブレークポイントを作成したりマウスオーバーやドラッグすると、エクスプレッション値が表示されます。 選択したラインにマウスオーバーしたり、ラインをドラッグすると、エクスプレッション値が現在カーソルがある位置のブレークポイント値に応じて表示されます。
ブレークポイントのエクスプレッション値
  • ブレークポイントを移動するには移動先へドラッグします。 ドラッグするブレークポイントが選択範囲内にある場合、その範囲内にある他のブレークポイントも一緒に移動します。
  • ブレークポイントを右クリックしてコンテキストメニューから[値を編集]を選択します。 これで、コンピューターキーボードを使用して編集フィールドで正確な値を設定できます。 複数のブレークポイントを選択していると、それらが相対して移動します。 同様に、ブレークポイントのプレビューを右クリックして[値を追加]を選択すると、正確な値で新規ブレークポイントを作成することもできます。
  • ラインを選択するには、ラインの近く(ライン上ではなく)をクリックするか、 Shift を押しながらライン上をクリックします。 ラインを任意の位置まで移動するには、マウスの左ボタンを押しながらラインをドラッグします。 ドラッグ中のラインが現在選択中のタイム範囲内にある場合、Liveが選択範囲の端にブレークポイントを作成して、ライン全体が一緒に移動します。
選択範囲内のブレークポイントを移動するにはその内のいずれか1つをドラッグ
  • [MPE]タブでは、グリッドがデフォルトで無効になり、より細かい編集を簡単に行えます。 グリッド設定は、他のタブのグリッドとは別個のものとして、クリップとともに保存されます。
  • グリッドを有効にする必要がある場合、[オプション]メニューの[グリッドに吸着]をオンにするか、ショートカットCtrl4 (Win) / Cmd4 (Mac) を使用します。 グリッドが有効になると、ブレークポイントとラインは、周囲のブレークポイントが置かれたタイミングに吸着します。 グリッド線近くにブレークポイントを作成すると、自動的にその線へ吸着します。
  • ラインやブレークポイントを移動する時、 Shift を押しながらドラッグすると、移動が縦軸や横軸のどちらかに制限されます。
  • Shift を押しながら縦方向にドラッグすると、ブレークポイントやラインの値を細かく調整できます。
  • ブレークポイントまたはラインを、隣のブレークポイントに「かぶせる」よう水平にドラッグすると、隣接するブレークポイントを消去できます。
  • Alt (Win) / Option (Mac) を押しながらラインをドラッグすると、そのラインがカーブします。 カーブしたラインを直線に戻すには、 Alt (Win) / Option (Mac) を押しながらダブルクリックします。
カーブしたエンベロープのライン
  • [Pitch]のエクスプレッションエンベロープを除き、[Slide][Pressure][Velocity ][Release Velocity]の各エンベロープは、複数選択したノートのベロシティと同じように、ノート長の全体にわたって相対的に拡大縮小できます。 これを行うには、まずノートのエリア外をクリックしてから、目的のエンベロープの上にマウスを置きます。 エンベロープが青に変わったら、クリックして上下にドラッグすると、それに応じてエンベロープが拡大縮小されます。 この動作も、複数選択したノートのエクスプレッションエンベロープを同時に編集する操作と同じです。
  • 選択したすべてのブレークポイントを、拡大縮小ではなく、均等に調整することもできます。 これを行うには、まず編集するエンベロープをクリックして CtrlA (Win) / CmdA (Mac) ですべてのブレークポイントを選択したら、マウスで上下にドラッグして値を増減します。 左右にドラッグすると、すべてのブレークポイントをまとめて水平方向に移動できます。
  • ノートを移動すると、そのノートのエクスプレッションエンベロープも一緒に移動します。
  • MIDIエディター内のMIDIストレッチマーカーや、ピッチとタイミングのユーティリティのタブ/パネル内の[/2][×2]ボタンを使用してMIDIノートをストレッチすると、そのノートに属するノートごとのエクスプレッションデータもストレッチされます。
  • [Pitch]のブレークポイントは、グリッドがオフの時に Alt (Win) / Cmd (Mac) を押すと、直も近いセミトーンに吸着します。 この操作は、ドローモードで[Pitch]の値を設定するときにも適用されます。 この動作は、グリッドがオンの状態で同じショートカットを使用することでバイパスできます。
  • [Pitch]のエンベロープは、[MPE]タブで[Fold]が有効の時は非表示になります。
  • [MPE]タブを開いているときに[クリップ選択にズーム]またはショートカットZ を使用すると、選択したタイム範囲に含まれるピッチベンドの値に応じてズームレベルが調整されます。
  • [MPE]タブを開いているときに、MIDIノートエディターやノートごとのエクスプレッションレーンのコンテキストメニューから[すべてのMPEエンベロープを消去]を選択すると、1つまたは複数選択したノートからすべてのエクスプレッションエンベロープを消去します。

12.3 エンベロープを描画する

ドローモードを有効にして[Pitch][Slide][Pressure]のエクスプレッションレーン内をドラッグすると、エンベロープをフリーハンドで「描画」できます。

MPEデータのドローモードに切り替えるには、[オプション]メニューから[ドローモード]を選択するか、コントロールバーの[ドローモード]スイッチをクリックするか、 B を押して、編集するエンベロープをクリックします。 B を押しながらマウスで編集すると、一時的にドローモードに切り替わります。

エンベロープを描画

Shift を押しながら上下にドラッグすると、より細かくエクスプレッションの値を調整できるようになります。

[オプション]メニューで[グリッドに吸着]グリッドを有効にするか、ショートカットCtrl4 (Win) / Cmd4 (Mac) でグリッドを有効にした時にドローモードを使用すると、表示中のグリッド幅でステップを作成します。グリッド幅は 便利なショートカット を使用して変更できます。 グリッドが無効の時に Alt (Win) / Cmd (Mac) を押しながら描画すると、一時的にグリッドが有効になります。

12.4 LiveデバイスおよびPush 2上のMPE

数多くのLiveデバイスはMPEに対応していて、サウンドに新たな次元の表現力をもたらすMPEプリセットも備えています。 これらのデバイスの表現力豊かな機能に、Push 2 のポリフォニックアフタータッチを活用することもできます。

12.5 外部プラグインのMPE

MPE対応プラグインのMPEデータも、Live内でアクセスしてモジュレーションできます。

プラグインのMPEモードが有効/無効の状態は、そのプラグインのデフォルト設定と共に保存されます。

MIDI出力が可能でMPEが有効のプラグインでは、MPEを出力することもできます。

12.6 MPE/マルチチャンネル設定

特定のMPE構成を設定するには、以下のMPE/マルチチャンネル設定ダイアログからアクセスします。

  • External Instrument デバイス。
  • Liveミキサーの入力/出力セクション。
  • MPE対応プラグインのコンテキストメニュー。

これらの設定は、特定のMPE設定を必要とするハードウェアシンセや、MPEに公式対応していないものの、マルチティンバー対応でMPEコントローラーを使用可能なプラグインなどに使用できます。

12.6.1 MPE/マルチチャンネル設定ダイアログにアクセスする

External Instrument デバイスは、[MIDI To]ドロップダウンメニューからルーティング先を選択できます。 その後、2番目のドロップダウンからMPEを選択し、再びメニューを開いて[MPE設定]を選択します。

External InstrumentのMPE設定

ミキサーの入力/出力セクションでこれらの設定を開くには、MIDIトラック出力の[MIDI To]でコントロールしたいデバイスを選択して、セッションやアレンジメントのミキサーの[MIDI To]ドロップダウンメニューから[MPE]を選択したら、再びドロップダウンメニューを開いて[MPE Settings…]を選択します。

入力/出力セクションのMPE設定

MPE対応プラグインの場合、この設定はプラグインのタイトルバーのコンテクストメニューにあります。

プラグインのコンテキストメニューのMPE設定

12.6.2 MPE/マルチチャンネル設定ダイアログ

MPE/マルチチャンネル設定

この設定を使用すると次のことができます。

  • MPEを外部MIDI機器やプラグインに送る際、Liveが使用するMPEゾーンとノートチャンネルの範囲を設定する。
  • [Upper Zone]と[Lower Zone]の選択や、ノートチャンネル数の選択。
  • ノートチャンネルを任意の範囲で設定できる、マルチチャンネルモードの選択。

[Upper Zone]と[Lower Zone]はそれぞれ設定可能です。 1つのトラックは1つのゾーンにしか出力できないため、両方のゾーンを使用するには2つのトラックを設定します。

各ゾーンはグローバルチャンネルに設定することが必要(ポリフォニックではないコントロールの場合)です。 [Lower Zone]のグローバルチャンネルはチャンネル 1 、[Upper Zone]のグローバルチャンネルは 16 です。 また、他のMIDIチャンネルの範囲を各ゾーンに割り当てることもできます(一般的に、ゾーンに割り当てるチャンネル数は、そのゾーンに必要なポリフォニーの数に連動します)。 ゾーン構成の例としては、チャンネル 1-11 を[Lower Zone]に、チャンネル 12-16 を[Upper Zone]に使用します。

注:LiveはMPE出力のゾーンのみ対応していますが、これは特定のゾーン構成を必要とするハードウェアシンセの場合に便利です。

これらの設定は、たとえば2台のMPEシンセを同じMIDIインターフェースに接続したり(2台目にはもう1台のMIDIスルーを介して接続)、2つの異なるサウンドを異なるゾーンに割り当ててコントロールできるシンセの設定にも使用できます。 Liveでは、同じMIDI出力先にルーティングした2つのMIDIトラックを設定しますが、一方のトラックは[Lower Zone]用、もう一方は[Upper Zone]用に設定します。